抱きしめてトゥナイト

つらつらと、つれづれに。

5年8ヶ月真剣に付き合った女が、彼氏ではなく「パートナー」を作って学んだ話。10

 

 

わたしはわたしで、きっと何があってもわたし以外の何者でもない。

 

でもわたし自身が自分を卑下しないと付き合えないような付き合い方しか

できないんだったら

 

 

きっとわたしは一生この人といたとしても自分を好きになれない。

 

 

 

もう、やめよう。

 

 

 

やっと決心がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯さよならをしようとしたこと

 

 

そう思い立ってお盆が過ぎ

わたしは彼に何度もいつ会える?と伺いを立てていた。

 

どうしても最後は顔を見て大事だったと伝えたかった。

 

 

 

 

彼は正直クソみたいなとこばかりだった。

大好きなとこより大嫌いなところを数えたほうが早かった。

けれどこの8ヶ月間わたしを支えてくれたのも確かだった。

 

悔いは残したくない。そうおもうと、どうしても最後に会っておきたかった。

 

 

理由を言ってから会うときっと最初からお通夜状態で揉めてしまうだろう。

 

だからわたしは平静を装い会えるかどうか何度もきいた。

 

 

そのたび彼にうーんといい少し濁された。

いやバイバイしたいだけだから会おう?!?!そう言いたい気持ちを抑え

わたしは会いたいよ〜と続けた。

 

 

 

◯◯日は?  あ、わたしだめかも。

じゃあ◯◯ならどう?   その日はだめだ。

 

 

お互いの予定が合わず、どうにも会えなかった。

そのやり取りで数日が経った。

 

 

 

これ以上引きずると多分わたしの決心鈍る、やばい。

 

 

そうおもって会える日を何度も提案し続けてると

彼からたくさんの楽天トラベルで調べられた情報が送られてきた。

 

 

 

 

 

「泊まりにいかない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯外に泊まりに行くことを提案されたこと

 

 

 

「どうかな」

 

 

 

え、どうかな、ってえ、どっか行くの?

 

 

 

 

 

その一言と調べられた場所何点かの画像だけ3Dタッチで既読をつけず

見ていたわたしは大きく心が揺れた。

 

 

 

 

 

その日わたしは友達と男友達と一緒に3人で横浜のアウトレットに来ていた。

男がいるというと喧嘩の一端になるので黙っていたわたしだったが

横浜のアウトレットに行くということだけは伝えていた。

 

 

 

 

思わず手が震えた。どうしよう。どうするのが正解なんだろう。

 

 

 

 

 

 

ラインを友達に見せると

友達は、いって来なよ。きっと仲直りしたいんだよ。

最近いろいろあったしごめんって伝えたかったんじゃない?と言った。

 

男友達も言って来なよ。俺そっちまで送ってくよ。と言ってくれた。

 

 

 

 

すごく心が揺れた。

 

 

いやバイバイするって決めたばっかりじゃん。

 

 

でも、本当は少し嬉しかった。

ちょっとはごめんなさいの気持ちがあるのかな

 

そうおもうとどうしようもなく愛しく感じてしまって、

 

バカなわたしはよく読まずに、思わず

 

 

 

 

 

行く。

 

 

 

 

そう返事をした。

 

 

 

すると

「そう?じゃあ予約取っちゃおうかな」

とすぐ返ってきた。

 

 

 

そこで初めてわたしは

そういえばどこに泊まるつもりなんだろう?

 

 

そうおもって文章を読み返した。

 

 

 

えーっとなんだって・・・・?

 

 

 

 

 

「明日は◯◯で◯◯があるから、君がいいって言うんだったら早めに今日向かって

そっちにいくためにどっかホテルに泊まろうかとおもうけど

 

 

3700円出せるんだったら、会おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3700円???????????????????

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯3700円払えと言われたこと

 

 

 

 

 

 

 

えっと3700円って・・・・えっと・・・・

 

 

 

 

😊?

 

 

 

(ここで感情が表せないため絵文字を使用することをお許しください)

 

 

 

 

 

今までどんなに一緒にいても昼飯代、遊び代、夜メシ代、交通費、移動代、

すべてを出していてくれた彼からの突然の3700円(しかも端数すぎんだろ)

の徴収サプライズはわたしの理解の範疇を超えていた。

 

 

えっ急にどうした?

 

 

 

えっとホテルに、行くお金を、わたしが半分払うって意味?

(マリーアントワネットみたいな雰囲気ある発言だけど本当にそうおもった)

 

なぜ?33のおっさんとホテルに行くお金をわたしが半分払う?

(失礼だし本当にちゃんと好きだけど心からそうおもった)

 

 

えっていうか端数すぎん?3000円とか4000円ならまだしも

端数ぴったりまで割り勘しないといけないくらい

わたしと外に泊まるにはお金が払えないわけ?

 

 

これで彼が浮気をしてないとわかっていたらしぶしぶだしたかもしれないが

他の女にホテル代を払ってることがわかってる今(絶対割り勘とかしない)

 

急激に割り勘を請求してくる干支一周離れた男にわたしは

苛立ちと困惑を隠せなかった。

 

 

 

 

 

 

早急に文字を打つ。

 

 

 

 

 

「ごめん3700円でないわ」

 

 

 

 

「わかった、じゃあなしか」

 

 

 

 

 

 

 

いやまじかよ。

 

 

いや正気かーーーーーーー!横浜の海に叫びたい衝動を抑え

(抑えきれてなかったけど)

 

 

 

 

 

 

 

その日電話しようとしたが時間がお互い合わず

次の日に話すこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

◯3700円事件のこと

 

 

 

 

 3700円?いかんでいいそんなもん。

いったらもはや引く。

てか3700円払えって頭おかしいんじゃねえの。

 

周りからの盛大な後押しもあり

わたしは今回の件に関しては強気でいくことを決めていた。

 

 

 

もちろん、もともと割り勘で過ごしている人もいるだろうし

女が多く払う場合だってあるだろう。

 

もちろんお金を払ってもらうことが正義だとは思っていないし

わたし自身の価値だともおもってるわけではない。

(ちょっと思ってるけど)

 

だが、やはり

今月厳しいから出して、と言われる場合なら許せるが

他の女とやるお金とっときたいし使っちゃったから、出すならいくよ

 

じゃ意味合いが違うのである。

 

 

出してもらってることにありがたさや感謝は感じているが

そこはどうしても譲りたくない部分ではあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

電話がつながる。

なんとも言えぬ緊張感が漂った。

 

「この前3700円はらえって言ったけどあれってなんだったん?

貴方が女子大生にお金払えっていうようなタイプに思わなかったからびっくりしたし

何かの間違いかなって思ったんだけど」

 

 

客観視するとさながらただの勘違い姫様の発言である。

 

だが率直に言ってこれ以外の感情が浮かばなかったし

今回の件には強気で行こうと思っていたわたしは思いの丈をぶつけた。

 

 

 

「 いや逆に俺は悲しかったわ」

 

 

 

え?

 

 

 

 

 

「やっぱ俺は金の払う価値しかない男って思われてるんだなって思ったわ。

いっつも出しててそれは構わないけどそういうイレギュラーな事態ですら

3700円俺には出そうと思えないのかってすごくおもったよ。

だって君は現に今横浜のアウトレットには来れてるだろ。

他の人と飲みに行ってるのだって知ってる。

なのになんで俺には3700円すらも出そうと思えないの?」

 

 

 

 

逆にそう来ちゃいます?

 

 

 

逆ギレのオンパレードである。イレギュラーな事態ってなんやねん。

イレギュラーかイレギュラーじゃないかお前が決めんな。

ていうかなんで被害者ズラやねん最初に俺が全部金出すっていったのもお前やろがい

3700円でるかって?いや友達には出てもお前は友達じゃないからそれこそイレギュラーや

 

 

 

 

 

そう言いたかったがそう言ったら100パーわたしが悪者になるな

と思ったわたしはなにも言えずただ

ん〜〜そんなことはないんだけども〜wwwみたいに唸っていた

 

 

 

すると彼は

続けていった

 

 

「あのさ、君は3700円が本当になかったの?

それとも俺に出す3700円がなかったの?」

 

 

 

 

 

どちらもじゃアホ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とも言えず

 

本当になかったよ、でも3700円払えって言われて

今まで言われたことなくて急だったらびっくりしたというか

もうわたしにかけれないって意味なのかと思って

そう思われてるならやめたほうがいいかなって思った。

 

お互いが今回はお互いを勘違いしてたんだね

 

そういう風にまとめようとしたが

 

彼は納得がいかないようで

 

 

ことあるごとに俺には3700円はらえないのにね?と言ってきた。

 

 

 

 

 

そっくりそのままかえすが??

 

 

 

 

 

 

 

 

とにかく今ここでもう関係をやめようといったら

多分わたしは一生8ヶ月過ごしてきたのに3700円払って欲しいと言っただけで

憤慨して消えていった女の称号をつけられるんだろう

 

 

そうおもうと

もうやめようの一言が言えなかった。

 

 

 

 

11につづく

 

 

 

 

5年8ヶ月真剣に付き合った女が、彼氏ではなく「パートナー」を作って学んだ話。⑨

お盆を迎えて数日

 

私はそのとき本当に情緒不安定が限界突破していた。

 

35Kg痩せたとはいえ、一般的にはまだ甘く見積もってもぽっちゃり

と言われる部類に入る私は(元が相当だったので)

もう少し痩せたら?と体型のことを言われていたことを思い出し

 

自分が大事にしてもらえなくなった理由は見た目が原因だと思うようになった。

またわたしはショート丈の服や露出がある服が好きだったので

嫉妬深い彼からいつもミニスカートを履くなとか(体を他の男に見せるなって意味)

言われてたのに無視していた。

 

そのことから

 

それを守れば愛されるのではないか。

俗に言う芸能人の泉里香みたいな女になれば愛されるのではないか。と思うようになった。

 

 

 

そう本気でその時は思ったのだ。

今思うと本当に頭がおかしくなっていたのだが相当切羽詰まってたのである。

 

そこから世にも奇妙な私の泉里香を目指す日々が始まった。

 

 

 

 

◯自分のことを泉里香だと思い込もうとしたこと

 

 

 

自分が泉里香のような一般受けしそうな美人でスタイルのいい女だったら

一度失いかけた気持ちも戻るのではないか、そう思った私は

自分のことを泉里香だと思い生活するようになる。

 

周りの友達にも今から私、泉里香になるからと伝え

またもや過激目なダイエットとともに服装を変え、髪の毛とメイクを変えた。

 

周りの友達はそれを否定しなかった。

今思うと本当に涙が出そうになる位、みんなには感謝の気持ちしか言えない。

誰一人と馬鹿なことしてるなと笑うことはせず応援してくれた。

またあんたは!大事なのはそこじゃないでしょと言いながらも

そこも大事よね。と全否定せず受け止めてくれた。

 

ラインの登録名まで泉里香にしてくれた子もいた。

 

 

 

 

この泉里香だと考えて生活する方法は

いたってあほらしいことではあったが一概に悪いことではなかった。

 

 

 

泉里香だったらきっとコンビニでお菓子は食べない。

泉里香だったら筋トレしてマッサージして喉が乾いたら白湯を飲むはず。

泉里香だったら電車に乗った時に一目散に座ろうとしたりしない。

 

 

無論勝手な妄想である。泉里香の私生活なんて見たことも聞いたこともない。

だがこの泉里香をつかったいわゆる

 

 

《仮定美人法》

 

 

は案外自分を整えてくれた。結果的に言うと私はこれで一ヶ月で6キロほど落とした。

 

 

だがこの仮定美人法、一つだけデメリットがあった。

 

 

 

仮定美人を目指すことにより自分を必要以上に卑下してしまうことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯自分を認められなくなったこと

 

 

誰かになりきって生活をすることで、いつもの自分と違う所作や心を手に入れられる反面、《私自身だと誰からも大事にされない》そう私はいつからかそう思うようになっていた。

 

 

その結果

泉里香なら◯◯するよねとか

泉里香なら◯◯だったのにねとか

 

この世に本来存在することのない

愛される虚像

を作り出しそれを崇拝し愛される仮定をつくることで

自分を隠し守ろうとしていた。

 

 

 

 

こない返信、疑わしい行動。気まぐれのようなタイミングでかかってくる電話。

 

そのたび私は泉里香だったらな〜と言ってごまかした。

本当は辛かった。なんで、と問いただしたかった。

でも泉里香だったらきっとこんなことで問いただしたりしないし、自分の時間として自由に過ごすはず。

だし泉里香だったらきっと、大事にされてたんだろうなあ。

 

私じゃなかったら良かったのになあ。

 

そう思って過ごして数週間経った時、

私は友達に相談した。

 

 

 

 

 

◯友達が目を覚まさせてくれたこと

 

 

 

 

その頃私は

彼が実は浮気(といっていいのかわからないけど)をしてたことは

あまり他の友達には言えずにいた。

 

あんなに私にぞっこんで私も油断しきってたのをみんなが知ってたのに

こんなになってしまったと思われるのが非常に心苦しかったのだ。

 

自分のプライドも、許せなかった。

 

 

 

そんな中、私は一人の友達に相談した。

 

彼女は私と一緒で長年付き合ってる彼氏がおり、年数、付き合い方、性格もにているところが多々あったのでとてもそういう面では特別な友人だった。

 

 

彼女は最初から私と彼の関係についてあまり好意的ではなかったので

ストレートな意見に少々耳をふさぎたい時や話すのが忍びないなと思った時はあったが

彼女がいつも私のためを思いながらもいつも客観的な立ち位置から

正論を投げかけてくれることは私にとって、一つの道標のようで大切に思っていた。

 

 

 

彼女に意を決して話すと、とても驚いていた。

まさか彼がそんなことをするなんて、そう驚き怒ってくれながらも

私の話をしっかり聞いてくれた。

 

 

 

「そういうことがあってさ、全面的に悪いのはあっちだけどやっぱり私にも

悪い面があってこうなってるとおもうんだよね。切ればいいってのはわかるんだけどさ

勇気が出なくてさ・・・・ばかだよね。私が泉里香だったら彼になんて抱かれてないよねえまあ最初から相手にもしてないか!」

 

そうやって茶化して私が笑うと彼女は真面目な顔をしてそっと言った。

 

 

「あなたが泉里香じゃなくても、あなただって彼に抱かれるような人じゃないよ。」

 

 

 

その瞬間自分の中で我慢していた何かが

一気に崩れる音がした。

 

 

「そうだよね、私が泉里香じゃなくたって

 

私だってそんなことされるような人間じゃないよね」

 

 

 

うん。

 

彼女は頷いてくれた。

 

 

あなたはあなたのいいところがあるよ。

泉里香じゃないかもしれないけど、あなた自身を大切に思ってる人は

いっぱいいるし、思ってくれる人もいるよ。

 

 

 

 

今でも、その言葉はずっと心に残ってるし

多分一生消えないと思う。

 

私は私で、泉里香でもなければ、特段の美人ではないかもしれないけど

こんな話を一生懸命きいて、一生懸命伝えてくれて

一生懸命受け入れてくれる人がたくさんいる

それは、自惚れていいなら、《わたし》だったからかもしれない。

 

 

 

 

そうおもうことができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、さよならしよう。

 

 

初めてそう思うことができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10につづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5年8ヶ月真剣に付き合った女が、彼氏ではなく「パートナー」を作って学んだ話。⑧

 

 

 

 

 

それから普通に仕事に行く彼に見送られ家に帰った。

何事もなく終えたように思えたがやはり私の心はかなり限界に近づいていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◯電話したこと

 

 

 

今回のことには目をつぶり、とりあえず自分を磨き過ごそうと思っていた私だったが

何事もないようにすることは考えていたよりもはるかに難しく、残酷だった。

 

 

 

 

 

LINEや電話の履歴を4月ごろから全て見返したがやはり、疑わしいところはなかった。

彼は用意周到だった。時間やスケジュールにはおかしいところがない。つまり彼はあたりまえだがどれかに対して周到に嘘をついていた。そう思うと私はだめだとおもいつつもすべてを疑うようになってしまった。

 

 

 

 

 

そんな中、焦る自分と反比例するように彼からの返信速度や内容は日に日にどんどん薄れてきていた。

仕事が終わったはずの時間に電話が来ない、いやな予感がした。

それに耐えきれずおもわずいつもは自分からはかけることはない電話をかけると、通話中のため通話できないと表示された。

限界を迎えていた私はパニックになってしまった。

 

 

2分後に彼から着信がきた。寝てた〜とわざとツッコミを待ちつつにやけ口調でいう彼に反応をとることができずいると「いや、どうしたの」と言われる。

 

 

 

「誰と電話してたの」

 

 

 

 

 

彼に対して一度も誰といるのか、何をしているのか、追求をしたことがなかった私に彼は少し驚いたようだった。

 

「いやだれって、・・・友達だわ」

 

「友達ってだれ?」

 

  

 

 

「いやおかしいよ、どうしたの」

 

「おかしいのはそっちじゃん。今まで他の人と電話してたことなかったし。友達って何。仕事終わったのにどうして電話してくれなかったの?最近携帯もずっと持ってるし。浮気してるんじゃないの?新しい人いるんでしょ?」

 

 

 

 

手をつねっても、喉を抑えても止まらなかった。

もう私は限界だった。大丈夫だと何度も言い聞かせた私の心はとっくに壊れていた。

 

わかってから、わかってながらも抱かれてから、幸せだと言われてから、彼の顔を見てから、彼が他の誰かを抱いてると想像してから。彼が他の誰かを抱き、頭を撫で

好きだと伝える姿を考えてから。

 

もう、だめだった。

 

 

止まれ、止まれ、止まれ、と自分で何度も言い聞かせたが

止まることはできなかった。

 

 

 

「私のことを少しでも大事にまだ思ってるなら、少しでも良心があるなら言って欲しい。

 

 

私は最初約束した通り今あなたを裏切ることは決してしていないし変わらず大事に思ってる。

あなたは胸を張って私に絶対浮気してないと誓える?

私に他の人と絶対にしない、と誓った日からだれともしてない?本当に本当に

絶対に、一回もしてない?私はどうしてもしてるとしか思えない。

今大切に思ってる人は他にいない?」

 

 

 

 

少し黙ってから彼は言った

 

 

 

「してない。」

 

 

そして怒涛の勢いで続けた。

 

 

「・・・ていうかほんとにしてないのに、なんでそんなに責められなきゃいけないのかわからない。ほんとにしてないのにどんなに弁解しようと、君がそうやって言うんだったら俺がなんて言おうと、それって全く意味なくない?カメラでもつけて見せてやりたいんだけど。こんなに毎日一生懸命働いて悪いことも何もせず連絡もしているのに責められたらたまったもんじゃないししんどいんだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

まさかの逆ギレだった。あまりの剣幕と自分を正当化し嘘をつく姿に

もはや一瞬私が勘違いをしているのでは?あれ?友人A嘘ついた?

と思うぐらいの反論の勢いだった。

(そんなことはありえないんだけど)

 

 

あまりの勢いに私は黙ってしまった。そのうえ別れてからこれ以上ないほどの努力で抑えていた自分の感情で動くという行為をしてしまったことで非常に後悔していた私は

パートナーの自己防衛の剣幕と自分への自己嫌悪に負け、

「ごめんなさい、」とあやまってしまった。 

 

 

 

「ていうか何してるの?歩いて帰ってるってなんでそんなことするの?

夜道危ないとか自分声かけられてること多いのになんで自衛しようとしないの?

俺いつも言ってるよね?はぁ・・・・ていうかこうやって俺が言ってるのも心配じゃなくどうせマイナスに受け取るんでしょ?電車乗って帰りなよ。」

 

 

歩いていることにまで責められ、ごめんなさいとしか言いようがなく

どうすればいいのかわからず血迷った私は泣きながらさらにきいた。

 

 

 

 

「あなたは私とパートナーではなくしっかり付き合おうと思わないの?」

 

 

 

「いや、今こんな状態じゃどう考えても無理でしょうよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

自分でも、いやあたりまえだわ以外の言葉がうかばず

電話を切り、あまりの自分の馬鹿さ加減と情けなさに、声を出して泣きながら帰った。

 

 

家に帰るとヒールで歩いた私の足の皮はべろべろに剥けていた。

 

 

 

 

おかえり、と来たラインに

足の皮がむけたよと返すと

だから、いわんこっちゃない。とかえってきた。

 

 

 

 

死んじゃえばいいのにな、あんたも、私も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯その日以降のこと

 

 

 

 

 

次の日から昨日の出来事は何もなかったかのように、おはようと続いた。

今日、友達と飲みに行ってくる。と彼がいう。

わかった、いってらっしゃいというとごめんよときた。

 

 

何に対してのごめんだよ、と友達ってだれだよ、と飲みに行くって報告は欠かさずするのに付き合わないってどういうことだよの3つは必死で飲み込んだ。

 

 

 

返信は初期に比べて比較対象にもならないほど遅くなっていたが

それからも来続けた。

 

 

 

お盆に入り、彼が実家に帰省した(本当なのであれば)

 

 

 

今日は、実家で今日はバーベキューをする

今日は、ばあちゃんに会いに行って墓参りをした

今日は、みんなの車の整備した

 

 

 

毎日一回なにをしているかが送られてきた。

何をしている?ときかれるので私も答える。

そうすると聞いたくせに聞いたら満足するのか

数十時間既読無視を喰らうが、律儀に次の日には新たにやることが送られてきた。

 

 

1日一回レベルの返信はさながら日記かツイッターと化していた。

自然消滅するつもりかな。その不安を感じながら過ごしていると

 

 

 

ていうかあんまり連絡できなくてごめん。

 

 

 

そう彼から来た。

思ってるなら返事せいや五秒でできるやろ。

そう思いながらも、涙が止まらなかった。

 

 

 

 

 

⑨につづく

 

5年8ヶ月真剣に付き合った女が、彼氏ではなく「パートナー」を作って学んだ話。⑦

 

 

 

 

その後、私は涙がどうにもこうにも止まらず泣きじゃくり

友人Aは手を何度も握りながら辛そうな顔をしてくれた。

彼も私とパートナーがそういう関係であることなんて聞きたくなかっただろう。

顔をしかめたのは、パートナーの不貞を知ってるからだけじゃなかったはずだ。

 

なのに彼はずっとずっと、何も言わず泣き崩れるわたしの手を握っていてくれた。

 

そして

 

「君は、これから先、少しずつ、少しずつでいいから考え方や行動を変えていかないときっと幸せになることはない。だからゆっくり、変わっていこう」

 

と言ってくれた。わたしは何度もうなづくことしかできなかった。

 

 

 

新しくスタートするときに大事な人たちから五円玉をもらうことにしている私は

「五円玉ない?」と聞いたが彼は持っていなかった。なんで?と聞かれたので理由を話すと「それじゃあ、絶対に俺は君に五円玉をあげなければいけない。」と言ってコンビニまで走って五円玉をつくってくれた。油性ペンを買い5円に名前を書いてゆっくりと両手で渡してくれた。

 

彼の使っている電車の終電は無くなっていたが

終電で帰る、という私を駅まで送り届けてくれた。

 

 

彼の旅行のお土産でくれたパックをしながら家でまた泣いた。

わたしは何をしているんだろう。

 

 

友人Aのこの日くれた優しさをわたしは一生忘れないと思った。

そして何よりも、申し訳なさと自分への不甲斐なさが募った。

 

 

 

 

 

 

 

◯改めて一人で考えたこと。

 

 

 

 

 

そこからは自問自答の日々が続いた。ずっと涙は止まらなく、

ご飯を口にすると吐いた。水さえ飲めず、心臓はずっとずっと痛かった。

 

 

 

 

 

 

5年8ヶ月付き合って別れそうになった時に一つだけ

わたしはもう二度と言葉で人を傷つけないと学んだ過去がある。

 

 

ずっと優しく、支えていてくれた彼に私は最後の最後まで優しくすることも、褒めることもできず貶し怒って諭してばかりだったのだ。彼のいつも見ていたいいところを褒めることはなく、たまに見える悪いところだけを責め続けた。

そして別れそうになった時、やっとそのことに気がついたのだった。

私が彼に伝えるために使っていた言葉は正論だったが、それは正しいことではなかった。

 

正論は武器にしてはいけない。一度口から放った言葉が取り消せることはない。

言葉はいつまでも心に刺さって消えないのだ。特に、傷つける言葉だけは。

 

 

 

 

何があっても人を傷つけない、そう決めていた私はパートナーである彼にどう伝えればいいのかどうすればいいのか何を伝えたらいいのかわからなくなっていた。

 

 

正直言うと彼のことは傷つけたかった。私が感じた苦しみ以上の苦しみを一生かけて感じればいいと思ったし、私を思い、悔やんで、慄き、一生忘れなければいいのにと思った。

けどそれをしたら?私は幸せになれるのだろうか。その姿を見た時に私は心から笑えるのだろうか。私がされた苦しみを彼に返したところでそれは

 「彼を傷つけること」であって「私を幸せにするもの」ではない。

もし誰かに傷つけられた時同じことを返したら同じになるから絶対にしてはいけない。

それをしなかったことは自分自身を「正しさ」という武器で守ってくれるから、

そう他人に何度も私は伝えてきた。その事実だけが私を踏みとどまらせた。

 

 

それに本当は今すぐ切ればいいのだ。私は他の人と関係を持ったり私に冷めてしまった時はすぐにいなくなるからね、と言ったよね。と責めてすっぱりと。

 

最善の道なんて考えなくてもわかる。彼をなくしても新しい人ができるに決まってるし半年後にはきっと他のことを思って泣いてる。だから大丈夫だ。そう思えた。

 

 

そう思うことは容易かった。

でもバカな私は彼をすぐに切ることは、どうしてもできなかった。

失うのが怖かったのだ。

 

 

一度なくし、もう二度と手に入らないかもと思い、過ごして

またやっと手にしたありふれた毎日をなくすのが、もう怖かったのだ。

私は大馬鹿で弱かった。もう、本当に誰も失くしたくなかった。

 

 

 

 

 

 友達の私を思う言葉も、友人Aの優しさも気持ちも親の心配そうな顔も

誰かをなくす苦しみを考えれば受け止めることができなかった。

 

 

 

 

 

目をつぶろう、そう思った。

 

 

 

◯それからのこと

 

 

 

 

眠れず、食べられない日々は続いていたが変わらない態度で過ごしていたので

パートナーと私は会うことになった。会ったがやはり私は何も言い出すことができなかった。

彼もいつもと変わらぬ表情だった。ただいつの間にか携帯を手放さなくなっていた。

 

運転中も足の間に携帯が置いてあった。少し動く時は充電器から携帯を抜いてポケットに入れた。驚くべきことにセックスをする時でさえ携帯をあえてズボンのポケットの中につっこんだ。

 

目をつぶり普通に過ごそうと思った私もあまりに耐えられなくなり

「携帯になにがあるの?笑」とつっこんでしまうほどの変貌だった。

(仕事の連絡が来るかもしれないから、と言っていた。たわけ)

 

 

 

が、その日は言い出さないと決めていた私は

 

彼とセックスをした後シャワーを浴び、いつものように彼の全身のマッサージをする。

頼まれたわけではなかったが、もう日課となっていることだった。嬉しそうに笑って初めてされた、という彼が愛おしく始めたことは、いつのまにか当然となっていた。

 

肩を揉み、背中を指圧し、尻と太ももを押す。余すとこなく、少しでも疲れが取れるように。

30分くらいしてだろうか。

みそ汁定食の具は・・・といいながら彼は眠りについた。

どんな定食よ、といいながら私も横になった。 

 

 

 

 

目がさめると正面を向いて抱き合って寝ていた。

背中を向けたり少し距離を置かないと眠ることができない私だが

元彼と、パートナーである彼とだけは後ろからではなく前からハグした状態や

キスするような近さであっても眠ることができた。

それも離れたくないとおもう一つの理由だった。

 

 

 

 

 

 

5センチほどの距離にある寝顔を見つめる。私はこの光景をいつまで見ることができるんだろう、と思った。

なんとも思わなかったはずのお世辞にも綺麗とは言えない寝顔を見て微笑むようになったのはいつだったっけ。

 

目覚ましがなっても起きない彼を抱きしめておはようとつぶやく。

先に体を起こしてベットサイドに腰掛けて早く起きないと遅刻しちゃうよ、といいながらおでこと頭をゆっくりと、ゆっくりと撫でる。撫で続けて5分ほどし、

彼が私の腰に抱きつき顔を擦り付けた。起きたかい、とキスをすると

幸せだ、と彼は呟いた。私はそうだね、と抱きしめた。

こんな尽くしてくれる子そうそういないよと言うと

わかってるよ。と彼は言った。

 

 

私は彼を抱きしめながらどうしようもなく涙をこらえるのに精一杯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 ⑧に続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5年8ヶ月真剣に付き合った女が、彼氏ではなく「パートナー」を作って学んだ話。⑥

 

 

自分の感じていた違和感がすべて解決した。考えればわかる簡単なことだったが「簡単」と思ってやり切れるわけではなかった。

 

 

 

 

 

 

◯全てがわかった後のこと

 

 

 

 

とても従順にし、自分なりに彼をとても大事に思い尽くしていたこと。

 

 

仕事で疲れているという彼を労わり最初は都心の私の地元まで来てもらっていたのも全面的にあちらの方まで行くようにしていたこと。なのにきっと彼はその分他の女に会いに行っていたんだろうということ。

 

 

一見そんなの他の人が出来て当たり前だろ、と思われても仕方がない状況でいくら緻密に彼が動いていたとしても、バカみたいに信じきってしまっていたこと。それに伴い自分も操を立てていたこと。

 

 

本当は怒り狂ってぶん殴って問い詰めたいが、問い詰めたところで私は何も幸せにならないということ。

 

 

もし自分に今、絞らせたところでまた必ず繰り返すのは間違いないということ。

 

 

目の前の友人があまりにもバツが悪そうにしながら、でもわたしの手を両手で祈るように握っていること

 

 

別れるのはもういやだしつらくなるのはもういやだからと始めたはずのこの関係が

結局一番自分を苦しめていること。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは友人Aに「彼はわたしと関係があることを言ったことはある?」と聞いた。

友人Aは「いや本当に初耳だった。」と言った。

「わたしと友人Aがたまに遊んだりしてることは彼に言ったことがある?」と聞くと

「あぁ、それは遊んでるよ〜って言ったことがある」といっていた。

 

 

そうか、彼はわたしと友人が親しいことを知っていたのか。その上で友人Aに他の女を抱いた、と言ったのか。

 

 

 

 

 

 

わたしは全てに関して「あぁ、バカみたいだなぁ」と考えていた。

 

 

 

 

なんでこんなに悲しいのか。わたしは彼のことがそんなに好きだったのだろうか。

 

ここだけの話、あれだけいろんな人に愚痴を垂れてきたものの、本当は好きで情があるのは間違いないと思った。現にいつからか朝、隣で目が覚めて彼の寝顔を見ると気づいたら微笑んでるわたしがいた。でも好きじゃ補えないほど自分と彼はわかりあえないタイプの人間であることは心からわかっていたし、本当に大切だったらこの8ヶ月の間に、彼が言わないのであればわたしから付き合いたいといっていただろう。わたしは彼に付き合いたいとは言えなかったし言おうと思う決定的なものがなかった。 

 

 

これからどうする、そう自分に問いかける。

正直悩む必要はない。今すぐに切ればいい話だ。だがそう割り切れるようなものでもなかった。割り切らないとどうしようもないが、どうもできなかった。

 

 

彼の最初に言っていたパートナーのような存在というものはもう破綻している。

彼が他の女と関係を持ったらわたしはいなくなるからね、と重々伝えていた。

わたしがいなくなる、といったことをわかっていながらも

わたしと距離の近いとわかっている友人Aという共通の知人と一緒に

女性に声をかけにいった考えの浅ましさが一番許せなかった。

 

(友人Aの性の事情の話などはよく聞いていたので、わたしとパートナーの関係を知らない友人Aがこのまえは◯◯君と女性を引っ掛けて・・・などと話す可能性はいくらでもあった。パートナー自身もそれをわかってるはずなのに、それでもそのバレる可能性がある状況で友人Aに話したり一緒に漁るという軽はずみな行動がいやだった。)

 

 

 

 

ただ一番許せなかったのはわたしの馬鹿さ加減だった。

世の中に絶対はない、とあれほどわかっていたはずだった。あんなに学んだはずだった。

人は平気で嘘を付くし、人の気持ちは永遠に続くものではないともわかっていた、はずだった。

 

傷つかないため、と選んできた道は実は一番中途半端で、一番責任がなくて

一番脆いもので、一番自分を幸せにしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯パートナーとの今後のこと

 

 

 

 

これだけ親密に過ごしてきたが私と彼は「彼氏彼女」ではない。

あえていうなら、のパートナーのような関係だ。

 

 

ではパートナーとは一体何だったのか。

なんの契約を結んだわけではない。お互いに確証はない。好きだ、と言い合うなんて

動作もないことだろう。

 

ただ朝から毎日働き、定期的な時間にいろんな人に電話をかけきちんとラインをし、定期的に会う人を何人も作れるような時間はなかったはずだ。

世の中にはそれができる人もいるだろうが、そんなことができるほど彼は器用な人でも恋愛に全てを賭けるタイプでもない。

 

やはり一番に時間と手間をかけてくれていたのは間違いないだろう。自分は私の所有物であり、私は彼の所有物であるという感覚もあっただろう。

別腹感覚での女遊びということはわかる。いわば正妻ポジションであり他が側室ポジションなのもわかる。

 

 

 

でもわかってたまるか、バカヤロー。という話なのだ。

 

 

 

 

 

 

恋人にも、関係が近すぎた分ただのセフレにもなりきれない自分たちに残っている道は

悲しいことに「別れ」しかない。

 

 

 

たくさんあった時間も、たくさん知ったことも

付き合ってなくても全てがなくなってしまうんだと思うと

男と女っていうのはやっぱ世知辛く難しいものだなあと思った。

 

うまくいけば性も満たせて心も満たせて体が違う分別々のことができて

考え方が違う分いろんなものを得ることができるはずなのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⑦につづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5年8ヶ月真剣に付き合った女が、彼氏ではなく「パートナー」を作って学んだ話。⑤

 

 

 

 

◯パートナーに裏切られていたこと

 

 

 

 

これを読んだ人はいやいや、パートナーっていってお互い一人だけねって言っても

やることはやるでしょ。別に想像できなかったことじゃないじゃん。

 

 

 

 

そう思うかもしれない。

 

 

 

私だって、他の人に同じ話をされたらそう感じる。信じて操を立てるほうがバカだ

ともいうだろう。

 

 

でも正直な話信じられなくて呼吸がうまくできなくなるくらいには

衝撃的だった。

 

 

 

そう、衝撃的といってもいいくらい彼は私に対してマメだったのである。

 

 

 

 

彼の家は都心からものすごく離れていて、都心で出会った人間を家に呼べるような距離ではなかった。

毎日仕事が終われば終わった30分から1時間の間には電話がかかってきたし、

車で移動する音から、家に帰るまですべて隠し通さず生活音は聞こえていた。

 

飲みに行くときは誰とどういう風に飲みに行く、と必ず言っていたし

終わったら終わった報告、家に着いたの報告、家に帰る間その電話まできちんとくれていた。

 

彼は仕事を2つもっていたので一つの仕事のときは必ずと言っていいほど同じ時間に連絡がきたし、もう一つの不定期の仕事のときは連絡時間は不定期ではあったが

聞けばどこにいるという写真や終わった後、家に帰るまでの道のりには電話が来ていた。

 

 

 

何よりも私が遅くなると浮気だ、他の男ともしてるんじゃないかとも疑い自分は返事が遅くとも私が遊びに行くと言って未読だとすぐ何かしているんじゃないかと言っていた。最初に私に絶対に他の人としないでほしい、自分もしない、といったのも彼だった。

 

 

もちろん浮気を疑ったことがないわけではなかった。連絡もたしかに一時期よりは減った。ただ仕事もふざけてやっているわけではなく過ごして、そこまで緻密に私に対して動いている彼が他の女と関係をたくさん持っている時間や手間をかけるとはさすがに思えなかったのである。

 

 

 

 

 

 

◯パートナーの行動のこと

 

 

 

 

 

 

 

涙が止まらない私の手を強く握ってくれながら友人Aは

私がする質問にポツポツと答えてくれていた。

 

 

 

 

友人Aの話を聞くにパートナーは過去数回、友人Aと飲みに行ったという。

その際、パートナーのほうから、女性に声をかけていたらしい。

 

 

潔癖で人に厳しく、人の目を気にし、おこぼれをもらう(わたしが他の人に声をかけられて飲んでいたところ彼と関係を持ったように)ことはあれど

自分から声を率先してかけていくように思えなかったわたしはひどく驚いた。

 

 

そして1回その声をかけた女性と後日肉体関係を持ったと友人Aに話したらしい。

その日も他の人に声をかけていたため肉体関係を持った話は1度しか聞いていないものの、多分何人も関係を持った人はいるだろうという風に言った。

それに自分と会ったときだけで数回ある分、ほかでもなんどもあるだろうという話だった。

 

 

「いつ?」

 

と聞くと「五月下旬〜6月のはなしかな」といった

 

 

私は確信を持った、自分が違和感を持った時期と一致したのである。

 

 

 

 

 

 

◯違和感のこと

 

 

 

 

 

 

 

私は体があまり強い方ではなく、ウイルスや菌にとても弱いところがあった。

カラオケではマイクにティッシュを一枚挟まなければ風邪をひくし

風邪の友達と会えば比較的風邪をもらった。すぐお腹も壊すし、暑いなか歩くだけで

体調を数日間壊し高熱を出した。

 

 

 

それはセックスにおいても例外ではなかった。

 

 

 

 

私は新しい相手のものが入るとナカが不調になることが多々あったのだ。

 

赤裸々にいうと匂いが変わるとか、なにか異常が起きるとかいうことではないので

なにか不具合や都合の悪いことがあるわけではなかったが

「なにか自分の体内のピースがずれたような違和感」をとても敏感に感じるのだった。

 

 

私はパートナーと出会う前、セックスを不特定多数とするわけではなかったが数人と関係を持っていた。避妊具をするときもあったが元々彼氏とつけていない癖があったため

避妊具はつけないことが多々あった。

 

 

なのでするごとに調子が悪くなると検査を欠かさず行っていた。

ワンシーズンに1度以上は必ず検査を行っていたが幸い、性的な病気にかかったことは

人生で一度もなかった。自分の中のピースがずれる感覚だけだった。あえて言うなら

すこし白血球が増えてるかな、と毎回言われる程度だった。(相手の菌を追い出そうとしてる時にそうなるらしい。)

 

が、自分自身の潔白のためと、身の周りの人に迷惑をかけないため少しでも違和感を感じると相手のことも考え婦人科へ行っていた。

 

 

 

5年付き合った彼だけは一度もそのピースのずれを感じることがなかった。

だから私の中で彼は最高のセックスの相性だったし安心の相手だとおもっていた。

 

 

 

もうそんな人には出会えないだろう、私はいつも不調になるのかもしれない。

細胞レベルで彼があっていたんだろう。そう思ってた中、出会ったのがパートナーである彼だった。

 

 

パートナーである彼とはセックスをしても一度も自分の体内のピースのずれを感じることがなかった。なんどもしたし、1日に何回もすることもあったが

一度だってナカに違和感を覚えたことがなかったのである。

私のなかでこれは彼を大事に思う理由の一つだった。それほどピースのずれがないことは神経質な体を持つ私にとって大切なことだった。

 

 

 

それが変わったのが、5月の下旬から6月の前半だったのを深く覚えている。

 

セックスが終わった瞬間に自分の中の違和感を感じた。あ、これはピースがずれた感覚だ、と一瞬で察知した。

 

 

でもその日は喧嘩をした後だったので、精神的な影響かなぁと思って見逃した後

やはりいくらたっても中の違和感が拭えなかった私はまさかと思い婦人科に検査に行った。

 

私は前の検査をしてから数ヶ月、パートナーとしかセックスをしていないのでなにかあったらそれはパートナーが、ほかの人間とした、ということになる。

 

 

 

 

 

検査の結果はいつも通り特に何もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

だがそのかわりやはり相手の菌に体内が勝ちきれてない、という旨をいわれた。

彼は潔癖だったのでセックスをする前は念入りに下半身を洗っていたし

私自身も彼に合わせて相当丁寧に処理していた。周りも清潔であったし道具なども基本は使っていなかった。

なので、いつも通りにしている場合急に相手のなにか雑菌と言われても思い当たる節がなかったのだ。

 

 

 

 

 

そのことがあった為五月下旬〜6月に新しい相手と関係を持っていた話を聞いて

全てを理解した、彼として感じた違和感はこれだったんだ、と

(同時に自分の膣の神経質さにも驚いてすこし恐ろしくなった)

 

 

 

 

返信の速度が遅くなってきたのも5月下旬〜だった。

一度もう関係を断ち切ろうとしたまでの喧嘩をしたための態度の変化だと思っていたが

 

 

 

友人Aの話を聞きすべてが合致したのだった。

 

 

 

 

 

 

⑥に続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5年8ヶ月真剣に付き合った女が、彼氏ではなく「パートナー」を作って学んだ話。④

 

 

そしてついに事件は起きる。

 

 

 

 

 

 

 

◯恋人の定義とは

 

 

 

 

その日はおしゃれなかき氷を食べて、街探索や公園をぶらぶら散歩しようということになり私と友人Aは1ヶ月ぶりくらいに会い、いつもと変わらず楽しく過ごしていた。

 

そして夜、お酒を飲みながら談笑していた時

 

ふと、友人Aに「彼氏彼女って分類される境界線って何処なんだろうね」と話を持ちかけられる。

 

友人Aは今は彼女はいらないと元々公言しており、それに加えて彼が性的な関係を持ってる女性がたまにいることも話を聞いていたので、私と付き合いたい。という旨ではなく純粋に出た質問であるということは重々承知していた。

 

とはいうものの、電話がかかってくる回数が増えたことや距離が縮まってきたこと、

前話していた時に、次回遊びに行く場所の話になり特に何も気にせず私が一度パートナーの方と遠出した場所を提案したところ(③に書いたが一度遠出したことは話した)

 

「それ、◯◯君(パートナー)と君が行ったところだからやだ」

 

と言われ若干の違和感を感じたことなどから、その純粋に出たであろう質問の続きを想像して私は若干焦っていた。

 

続きを促すと

 

「こうやって仲良く遊びに行ったり、予定を立てたり、ご飯に行ったり、電話してたり、ラインをしたりお互いをしっかりと思い合ってるのにこれでも彼氏彼女と呼ばないならセックスの有無の違いしかないけど、どこからが境界線なんだろうね」

 

と続けた。私も別れてからというもの、新たな関係ができるたびに私も考えていたことだった。その純粋な疑問に、いやほんとわかるよ。と同意する気持ちだった。

 

(それに加え私も現在パートナーである彼にも常日頃考えていた。

自分とパートナーである彼はお互いのことをやんわりとだが彼氏彼女に等しい距離になっていた。が、でもそれを認めてしまったらお互いを生活にもっと組み込む必要性が出てきて今以上に動きにくくなるとお互いに危惧していた。そのことから今の半端な自分たちの提唱した「パートナー」という形が自分たちには最適であることも気づいていた。)

 

 

また彼氏彼女の境界線を探るほどに友人Aと私はそこまで近づいていたのかとそこで初めて気づいた。いや気づいていたが、それを考え始めたらもう友人として会っているという方便は使えなくなる。だが私はパートナーのほうを裏切ることをしたくなかった為、それを守るためにも男友達という距離を変えずにいる必要があった。

そのことから私は考えることを放棄していたのだ。

 

 

 

私は一瞬悩み、私たちの関係性をしっかりとさせることにシフトチェンジすることにした。

 

 

 

「うーん。たしかにそうだよね。でも例えば彼氏彼女だったら他の男の人と遊びに行ったりしたら嫌でしょ?他の人とやってるって話したり。私も嫌じゃないし、友人Aも嫌じゃないでしょ?つまり私たちはそういう話が楽しくできるから恋愛的な愛じゃなくて親愛で、だから人間として好きってことなんだよ!」

といった。

友人Aはほんとにそうだ!彼女の時は嫌だった。といったので私は安心して続けた。

今まで私はパートナーの名前はだしたことはなかったが、セックスをする相手が何人かいたことはよく話していたし現在は一人に今絞ってしていることも軽くだが話していた。そして相手もそういう旨で続けていると話していた。

 

 

「でしょ?今までお互いめっちゃはなしてきたじゃん。お互い誰とくっついたりしてたって遊んでたって嫌じゃないんだからさ、そういうことだよ!」

 

 

 すると友人Aはあー・・・と少し考えていった。

 

「でも俺、◯◯君(パートナー)と遊んだって聞いた時すごく嫌だったんだよね。なんか◯◯君でもいいんだっておもってさ」

 

 

 

といった。

 

 

 

 

 

 

その瞬間、私の中のいたたまれなさは頂点を突破し、あぁもうこれは言わなきゃダメなやつだ。と悟った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯パートナーの暴露

 

 

一瞬で顔が引きつった私を見て友人Aはえ、急にどうしたの?!と焦っていた。

 

 

でもここまできたら言わないで過ごすのはさすがに良心がなさすぎる。

そう思い私は、口を開いた。

 

 

「ごめん。私◯◯君とそういう関係なの」

 

 

今まで口止めされてたから、その件に関しては言えなかったんだけど

やっぱり言っといたほうがいいと思って。隠してたみたいでごめん。

 

 

そう続け、顔を見ると一瞬彼の顔は少し引きつったがすぐ形成を立て直し

「いや〜!まじか!いやでもそうだとおもってたわ。おかしいと思った。

2人で飲み直した時?それとも鎌倉の時?」

と笑いながら聞いてきた。

 

 

いやもうこれは正直に言うしかない。そう思った私は

 

 

「いやごめん、今もずっと続いてて。前話した他の人切ってパートナーみたいな形で過ごしてるってやつで。あっちの家に、もうまくらとか歯ブラシとか置いてお互いちょっと今は一人ねってかんじで関係つづけてるんだ」

 

といった。

 

 

 

その瞬間

彼の顔から笑いが消えたのを感じた。

 

 

一瞬そんなにショックだったのかな、と思った。

ごめん、とおもったが

顔の引きつり具合や目の泳ぎ具合から

彼がソレについてショックを受けてるのではなく私の話に違和感を感じていることがわかった。

 

 

 

 

 

 

 

いや、そんなわけないでしょさすがに。いやまさかね、いや。

 

一つの頭に浮かんだ最悪の可能性を打ち消そうとしたが

目の前の友人Aの顔を見て確信に変わる。

 

私は、一言一言、噛みしめるように言った。

 

 

 

 

 

 

 

「もしかして、◯◯君、他にたくさん、関係持ってる人、いる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友人Aはとても苦しそうな顔で、一度目を伏せた後、言った。

 

 

 

「うん。彼は他の女性とも、セックスをしてるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は自分の頭の中が真っ白になり血の気がサーっと引いていくのを感じた。

喉が締まり、足の指先が痺れるとともに

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・そうなのかぁ・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

と一言だけ絞り出すので精一杯だった。

 

 

 

 

 

 

 

⑤に続く