抱きしめてトゥナイト

つらつらと、つれづれに。

5年8ヶ月真剣に付き合った女が、彼氏ではなく「パートナー」を作って学んだ話。⑧

 

 

 

 

 

それから普通に仕事に行く彼に見送られ家に帰った。

何事もなく終えたように思えたがやはり私の心はかなり限界に近づいていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◯電話したこと

 

 

 

今回のことには目をつぶり、とりあえず自分を磨き過ごそうと思っていた私だったが

何事もないようにすることは考えていたよりもはるかに難しく、残酷だった。

 

 

 

 

 

LINEや電話の履歴を4月ごろから全て見返したがやはり、疑わしいところはなかった。

彼は用意周到だった。時間やスケジュールにはおかしいところがない。つまり彼はあたりまえだがどれかに対して周到に嘘をついていた。そう思うと私はだめだとおもいつつもすべてを疑うようになってしまった。

 

 

 

 

 

そんな中、焦る自分と反比例するように彼からの返信速度や内容は日に日にどんどん薄れてきていた。

仕事が終わったはずの時間に電話が来ない、いやな予感がした。

それに耐えきれずおもわずいつもは自分からはかけることはない電話をかけると、通話中のため通話できないと表示された。

限界を迎えていた私はパニックになってしまった。

 

 

2分後に彼から着信がきた。寝てた〜とわざとツッコミを待ちつつにやけ口調でいう彼に反応をとることができずいると「いや、どうしたの」と言われる。

 

 

 

「誰と電話してたの」

 

 

 

 

 

彼に対して一度も誰といるのか、何をしているのか、追求をしたことがなかった私に彼は少し驚いたようだった。

 

「いやだれって、・・・友達だわ」

 

「友達ってだれ?」

 

  

 

 

「いやおかしいよ、どうしたの」

 

「おかしいのはそっちじゃん。今まで他の人と電話してたことなかったし。友達って何。仕事終わったのにどうして電話してくれなかったの?最近携帯もずっと持ってるし。浮気してるんじゃないの?新しい人いるんでしょ?」

 

 

 

 

手をつねっても、喉を抑えても止まらなかった。

もう私は限界だった。大丈夫だと何度も言い聞かせた私の心はとっくに壊れていた。

 

わかってから、わかってながらも抱かれてから、幸せだと言われてから、彼の顔を見てから、彼が他の誰かを抱いてると想像してから。彼が他の誰かを抱き、頭を撫で

好きだと伝える姿を考えてから。

 

もう、だめだった。

 

 

止まれ、止まれ、止まれ、と自分で何度も言い聞かせたが

止まることはできなかった。

 

 

 

「私のことを少しでも大事にまだ思ってるなら、少しでも良心があるなら言って欲しい。

 

 

私は最初約束した通り今あなたを裏切ることは決してしていないし変わらず大事に思ってる。

あなたは胸を張って私に絶対浮気してないと誓える?

私に他の人と絶対にしない、と誓った日からだれともしてない?本当に本当に

絶対に、一回もしてない?私はどうしてもしてるとしか思えない。

今大切に思ってる人は他にいない?」

 

 

 

 

少し黙ってから彼は言った

 

 

 

「してない。」

 

 

そして怒涛の勢いで続けた。

 

 

「・・・ていうかほんとにしてないのに、なんでそんなに責められなきゃいけないのかわからない。ほんとにしてないのにどんなに弁解しようと、君がそうやって言うんだったら俺がなんて言おうと、それって全く意味なくない?カメラでもつけて見せてやりたいんだけど。こんなに毎日一生懸命働いて悪いことも何もせず連絡もしているのに責められたらたまったもんじゃないししんどいんだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

まさかの逆ギレだった。あまりの剣幕と自分を正当化し嘘をつく姿に

もはや一瞬私が勘違いをしているのでは?あれ?友人A嘘ついた?

と思うぐらいの反論の勢いだった。

(そんなことはありえないんだけど)

 

 

あまりの勢いに私は黙ってしまった。そのうえ別れてからこれ以上ないほどの努力で抑えていた自分の感情で動くという行為をしてしまったことで非常に後悔していた私は

パートナーの自己防衛の剣幕と自分への自己嫌悪に負け、

「ごめんなさい、」とあやまってしまった。 

 

 

 

「ていうか何してるの?歩いて帰ってるってなんでそんなことするの?

夜道危ないとか自分声かけられてること多いのになんで自衛しようとしないの?

俺いつも言ってるよね?はぁ・・・・ていうかこうやって俺が言ってるのも心配じゃなくどうせマイナスに受け取るんでしょ?電車乗って帰りなよ。」

 

 

歩いていることにまで責められ、ごめんなさいとしか言いようがなく

どうすればいいのかわからず血迷った私は泣きながらさらにきいた。

 

 

 

 

「あなたは私とパートナーではなくしっかり付き合おうと思わないの?」

 

 

 

「いや、今こんな状態じゃどう考えても無理でしょうよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

自分でも、いやあたりまえだわ以外の言葉がうかばず

電話を切り、あまりの自分の馬鹿さ加減と情けなさに、声を出して泣きながら帰った。

 

 

家に帰るとヒールで歩いた私の足の皮はべろべろに剥けていた。

 

 

 

 

おかえり、と来たラインに

足の皮がむけたよと返すと

だから、いわんこっちゃない。とかえってきた。

 

 

 

 

死んじゃえばいいのにな、あんたも、私も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯その日以降のこと

 

 

 

 

 

次の日から昨日の出来事は何もなかったかのように、おはようと続いた。

今日、友達と飲みに行ってくる。と彼がいう。

わかった、いってらっしゃいというとごめんよときた。

 

 

何に対してのごめんだよ、と友達ってだれだよ、と飲みに行くって報告は欠かさずするのに付き合わないってどういうことだよの3つは必死で飲み込んだ。

 

 

 

返信は初期に比べて比較対象にもならないほど遅くなっていたが

それからも来続けた。

 

 

 

お盆に入り、彼が実家に帰省した(本当なのであれば)

 

 

 

今日は、実家で今日はバーベキューをする

今日は、ばあちゃんに会いに行って墓参りをした

今日は、みんなの車の整備した

 

 

 

毎日一回なにをしているかが送られてきた。

何をしている?ときかれるので私も答える。

そうすると聞いたくせに聞いたら満足するのか

数十時間既読無視を喰らうが、律儀に次の日には新たにやることが送られてきた。

 

 

1日一回レベルの返信はさながら日記かツイッターと化していた。

自然消滅するつもりかな。その不安を感じながら過ごしていると

 

 

 

ていうかあんまり連絡できなくてごめん。

 

 

 

そう彼から来た。

思ってるなら返事せいや五秒でできるやろ。

そう思いながらも、涙が止まらなかった。

 

 

 

 

 

⑨につづく